大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)2632号 判決

1 控訴人は、当審において、原審における第一次請求であるノウ・ハウの譲渡契約に基づく対価請求を、ノウ・ハウの実施契約に基づく実施料請求に変更した(訴の交換的変更。なお、控訴人は、消滅時効に関する被控訴人の主張に対する答弁において、右対価請求と実施料請求とは訴訟物が同じである旨主張するところがあるが、右両請求が訴訟物を異にする別個の請求であることは明らかである。)ので、まず当審における新請求(第一次請求)について判断する。

控訴人が被控訴人会社に対しA製品についての意匠及び考案、B・C・D・G各製品についての各意匠の創作を提供した経緯については、原判決理由二六丁表二行目ないし三〇丁裏二行目記載のとおりである(ただし、二八丁裏八行目の「右課員ら」を「右部員ら」と改める。)から、ここにこれを引用する。

控訴人は、昭和四四年一一月一四日、控訴人と被控訴人会社間において、A製品についての考案及び意匠、B・C・D・G各製品についての各意匠の創作を対象として、実施料を客観的に相当な額、すなわち売上額の二パーセント、毎月払、期間を被控訴人会社が右ノウ・ハウを使用する間として、黙示的に実施契約が成立した旨主張する。

しかしながら、控訴人と被控訴人会社との間に、被控訴人会社が右の創作を使用して自転車を製造販売した場合、控訴人に対し、その売上額に応じて毎月一定の実施料を支払う旨の合意が黙示的にせよ成立したことを認めるに足りる何らの証拠も存しない。かえつて、前記認定事実によれば、控訴人は、昭和四四年八月二五日ころ、被控訴人会社から八〇周年記念大会に展示する新製品の開発のため自転車に関する考案、意匠の創作等の提供を求められ、同年九月八日以降、被控訴人会社に対し、自転車に関する具体的な商品化の提案をして、A・B・C・D・G各製品の試作品製作を指導し、もつて、A製品についての考案及び意匠、B・C・D・G各製品についての各意匠の創作(原告のいうノウ・ハウ)を客観的に相当な額の対価をもつて被控訴人会社に譲渡する旨の申込をし、被控訴人会社は、同年一〇月七日から同月九日までの三日間にわたり開催された八〇周年記念大会においてA・B・C・D・G各製品を使用した自転車の新製品を展示し、同年一一月一四日からこれを商品として製造販売することによつて、控訴人の右申込を黙示的に承諾し、右内容の譲渡契約が成立したものというべきである。

したがつて、控訴人と被控訴人会社との間に、前記ノウ・ハウの実施契約が成立したことを前提とする控訴人の新請求(第一次請求)は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

2 そこで、控訴人の第二次請求である不当利得返還請求について判断する。

被控訴人会社が、控訴人から自転車に関する前記創作の開示を受け、これを実施した自転車を製造販売したことは、前記認定のとおりである。しかしながら、被控訴人会社が右自転車を製造販売して利益を得たとしても、右の受益が法律上の原因なくしてなされたものであることを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、前記認定事実によれば、被控訴人会社は、控訴人との間で前記創作の譲渡契約を締結し、右契約関係に基づいてこれを用いた自転車を製造販売したものであつて、その受益には法律上の原因が存することになり(控訴人が現に右対価の給付を請求する権利を有しているか否かに拘らず)、不当利得の成立要件を欠くことは明らかである。

したがつて、控訴人の第二次請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

3 以上のとおりであつて、控訴人の当審における新請求(第一次請求)は理由がないからこれを棄却することとし、控訴人の第二次請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却する。

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